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2016年8月13日 (土)

不屈の棋士/大川慎太郎

これまで将棋の強さこそ棋士の存在価値でしたが、コンピューターの将棋ソフトが驚異的な力をつけた現在、その価値観が揺さぶられています。本書は棋士11名に「これから棋士としての価値をどこに見いだしていくのか」と問うたインタビュー集です。

ponanzaを代表とする将棋ソフトやGoogleが開発した囲碁ソフトがプロ棋士に勝ってから「人工知能が人類を超えた」と大きな話題を呼んでいますが、ニュースによく登場する「人工知能」「機械学習」「ディープラーニング」という3つのキーワードが、イメージ先行で同じように使われているような気がします。自分もその違いがよく分かりません。まずこの3つの言葉を理解することから始めましょう。さっそく調べてみました。

「人工知能」は、本来なら人間の判断力や能力を駆使してしかできないことを、機械にやらせて自動化することを目的とした研究テーマです。
「機械学習」は、普段人間が行っているデータの分析や予測を機械によって自動化させることを目的とした研究です。つまり、「人工知能」の中の、データ分析や予測に特化した分野が「機械学習」ということになりますね。さらに、「ディープラーニング」は機械学習の一種の手法で、マシン側が自動的に学習データから特徴を抽出するということです。

以上をまとめると「人工知能」>「機械学習」>「ディープラーニング」の順に技術が深掘りされているということでしょうか。

このディープラーニングという技術の進歩が、現代の棋士に価値観の大転換を迫っています(現在、最強ソフトと言われるponanzaがディープラーニングを採用しているか分かりませんが、いずれアルファ碁のように進歩するでしょう)。

というのも、これまでは開発者が大量の命令文を人力でコンピューターに入力して、さらにこれまで棋士が残した膨大な棋譜データベースを読み込ませることで、将棋ソフトを作っていましたが、このレベルのソフトまでなら棋士の存在価値をおびやかすまでには至ってなかったと思います。なぜなら、これらの棋譜は棋士が積み上げた歴史であり、ソフトがこの英知を利用して作動している間は、たとえ勝負に人間が負けたとしても、過去の人間の英知の集積に負けたことにしかならないはずだからです。

しかし、ディープラーニングは、与えられた学習データから自動的に勝つための特徴を抽出します。プログラマーの手を離れて、まるでコンピューターが人間のように振る舞う、それがやがて神のように振る舞うのではないかというところに、棋士へ衝撃を与えていると思うのです。
「よい棋譜を残すことが仕事」という棋士のアイデンティティがコンピューターに取って替わるのでないかという怖れがあるのではないでしょうか。もちろん、その中には将棋ソフトを採用して研究することへの葛藤も含みます。

ということを考えながら、この本を読みました。テクノロジーの発展だけでは将棋ソフトは驚異的には強くならない。今日のソフトをつくった開発者のみなさんのインタビュー集も大川さんには出してほしいと思います。

 

Hukutus

 

 

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