真剣師 小池重明/団鬼六
団鬼六の「真剣師 小池重明(イーストプレス)」を読了しました。
1995年刊行の本なので今頃感ありますが、お付き合い下さい。小池重明の名前は「新宿の殺し屋」として異名のある伝説的な真剣師として知っている程度でしたが、この人物について詳しく書かれた本を初めて読みました。
鬼六先生はサービス精神旺盛の方だし筆も走るので、どこまで真実なのか分かりません。まるで小池の近くですべて見たように彼の生涯を描写しています。本の帯にも「この男だけは記録に残したい!」という信念でこれを書いたと。確かに破滅型の魅力をもった将棋指しだったようですね。
たまたま手にした近代将棋1997年3月号の鬼六先生のエッセイからの抜粋になりますが、先崎六段(=当時)が小池棋譜を全局並べてみたというところで、こんな事を飲みながらしゃべってくれたそうです。
「アマ強豪の小池が明らかに悪手を指しているのにプロ強豪の彼らがそれをとがめる事なく自分達もつき合いの良さを発揮するように続いて悪手を指すというのは小池の妖術にはめられたとしか思えない」とか「西洋医学を学んだエリートがアフリカの祈祷師の医学に破れたようなものである」と先崎先生ならではのおもしろい感想を述べています。
実際のプロ棋士と小池の対局を目の前で観戦していた鬼六先生もこれに呼応して「(小池に破れたプロ棋士が)今から考えればなんで小池に不覚をとったか不思議に思えてくる。しかし、信じられないような事でも過ぎ去ってしまえばすべて懐かしい思い出だ」と振り返っています。
その鬼六先生もとうに鬼籍に入る。村山聖の映画が今秋公開されますが、小池重明の映画かドラマも見てみたいと思うのはぷりうす一人ではないと思うが、いかがでしょうか。
本書でもうひとつ驚いたのは、小池の居城としていた将棋道場の「天狗クラブ」が時代の流れで将棋居酒屋「天狗茶屋」と名称を変えた頃に、沖縄の将棋界の重鎮の方が従業員としてそこで働いていたことでした。機会があればその当時のお話をぜひお伺いしたいと思っています。
小池重明享年44歳。荒唐無稽な人生を送った将棋指しでした。
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