棋神 阪田三吉 / 中村浩
阪田三吉について知っていることは、明治から昭和の初めに大活躍した将棋棋士だったということ。他には阪田流向かい飛車という戦法も知っていますが、これはまだまだ上手く指せません。
この夏、大阪の新世界に行きました。通天閣の脚下にある三吉翁を称える王将碑も見学しました。阪田三吉についてもっと知りたいと思い、やっと中村浩の「棋神 阪田三吉(講談社)」を読了。1980年に出版された古い本ですが、これはおもしろかったですよ。
著者の父上の中村眉山と三吉は大正五年頃に出会い、この後、中村家と三吉は二十年に渡る交流がありました。幼少の頃から三吉の身近にいた著者が、三吉のために、少しでも真実を伝え虚像を排除するのが、実像を知っている者のつとめとして描いた評伝です。
将棋の歌のレコードやCDを集めていますが、三吉を唄ったものは多いですね。歌詞のほとんどで奥さんの名前は「小春」になっていますが、実際の名前は「コユウ」。
これは三吉の死後に彼の生涯を戯曲化した『王将』の大ヒットがあり、その創作の中で「小春」となっているのが、そのまま伝わったということのようです。
本書では、三吉の語りは「」で書かれており、実際に彼と接した者だけにしか分からないニュアンスは味わい深いです。その語り口に三吉翁の人柄が偲ばれます。また、三吉を語る上ではずせない「銀がないている」の逸話は、改めて当ブログで紹介したいと思いますので、これはまた次回にでも。おすすめの一冊です。
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