寄稿 第41期久留米王位戦大会記③
翌朝6時。彼と朝の散歩に行く。将棋で遠征があるときの楽しみの1つ。
朝靄の久留米を散策しながら、街の雰囲気、天気、たわいもないことを話す。親子だけの時間である。彼の寝癖のついた髪がすごいことになっている。羽生先生のようにそのままにするか?と一瞬悩んだが、シャワーを浴びさせる。その後は日課をこなす。「ん?あーそうか」と独り言を言いながら棋譜並べをする。旅先でも変わらない毎朝の景色。集合時間になり、会場へ向かうバスへ乗り込む。ここから彼の挑戦が始まる。
降り出した雨の中、会場に到着すると、掲示板には地方予選の様子を取り上げた各県の新聞記事が貼り出されていた。厳しい戦いを勝ち抜いた強豪の方々。緊張感が高まる。それは私だけのようだ。彼は飄々といつものように小走りで会場と別室を行ったり来たり。彼にはいつもの県大会と同じ感覚なのかもしれない。
関係者と出場者以外立ち入ることのできない赤いラインの向こう側に、扇子を握りしめ歩いていく彼の背中は、いつもよりたくましく見えた。
全員一斉に対局開始。記者の押すシャッター音と駒音と対局時計をはじく音。かすかに聞こえる雨音。ピンと張りつめた空気がそこにある。歴史あるこの大会にふさわしい見事な会場と環境。すべての対局に記録係が同席し棋譜を取る。
一回戦の相手は鹿児島県代表の方。振り駒で先手が決まり居飛車に構える。相手の方は振り飛車。彼は急戦で挑む。
中央の位を積極的に取りに行く先手。後手も向かい飛車から中飛車に振り替えて迎え撃つ。目だけ明後日を向き脳内将棋盤と向き合ういつもと同じ様子の彼。2筋の突き捨てを同角と取ると飛車を切り、9筋からのぞいていた角を成りこみ飛車を取る。後手番の左金が前に出される形となる。この時、深く座りなおす。盤面を大きく見る。局面の方向性が見えたときの彼の癖だ。大駒の捌きあいから優勢を保ちそのまま勝ち切った。
この勝利で大会史上最年少勝利を記録した。運営上、感想戦は後程してくださいとの事で、棋譜の確認程度で終わったが、鹿児島県代表の方より非常に丁寧なご挨拶を頂き、対局を通じ勉強させていただいた事、感謝しかない。
つづく
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