寄稿 第41期久留米王位戦大会記②
大会の前夜祭では、各県代表が登壇し組み合わせ抽選、挨拶が恒例となっている。
彼は人前に出ることが苦手だ。将棋盤をはさめば、臆することなく何でもできるが、将棋から離れた途端、小学4年生に戻る。代表の方々と大きな丸テーブルにひっそりと座っている。彼の場違い感が半端ない。1人だけ小さな体。1人だけ戸惑っている様子。回転式丸テーブル上の食事のとり方もわからず困惑していた。離れた席の私を何度も呼び、あたふたしている。その時、「沖縄県代表Kさん!」アナウンスが聞こえると私の方に顔を向け、しかめっ面をする。「はやく行きなさい」そう促すとしぶしぶ登壇する。本人以上に緊張した私の心は震えてかもしれない。
マイクに向かい「沖縄から来ました・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
沈黙が会場を包む。彼の撮影に夢中な私も不安になりファインダーから目をそらす。大会慣れした参加者のみなさんから声援を受け、「・・・・優勝します!」とまさかの宣言。
会場が拍手とほほえましい笑みに包まれた。舞台に立つと「頭が真っ白になった」と言う。人前で話すことの難しさを覚え成長してくれたのなら、良い経験となった。「がんばったね」と彼に言ってはみたものの、私としては心拍数が上がりっぱなしで落ち着かない前夜祭となった。
その後部屋に戻り、明日の対局に向けて何やら対策でもするのかと思えば、タブレットで動画を見ている。将棋には全く関係ない動画である。「将棋の研究は?」と聞くと笑顔で「研究よりリラックスしたい」と一流のアスリートを思わせる発言。やれやれ。長時間の移動や、慣れない場での挨拶など少し疲れたのかと思い、就寝までのんびりと過ごした。
つづく
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