書籍・雑誌

2018年7月16日 (月)

棋士という生き方/石田和雄

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この連休は将棋世界8月号・特集の「角交換相振り飛車」を勉強している。
目から鱗が落ちるような手筋のオンパレードに「なるほどね~」と頷きながらメモをとっているのだ。学んだ成果が生かせるか、さっそく24で試してみよう。

すでに引退されて、現在は後進の指導にあたっていらっしゃる石田和雄九段の「棋士という生き方(イースト新書)」を読了しました。佐々木勇気や高見泰地の両棋士の師匠として最近はよくメディアで拝見しますね。これは知りませんでしたが、200名以上の支部会員を誇る日本一の東葛支部の師範も務められています。

1947年生まれの生い立ちから始まり、棋士になるまで~棋士生活~引退後までの人生を振り返っています。特に石田先生の若き全盛期の活躍ぶりの章はとてもおもしろかった。大山康晴や升田幸三といった昭和の名棋士が覗かせる勝負の世界の厳しさや素顔も知ることができました。
棋士という生き方や生活がどういうものなのかという、石田先生の人柄の良さも文面から伝わってくる好著ですのでぜひご一読をおすすめします。

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サイン本なのだ。

2018年6月29日 (金)

AIが起こす棋譜革命

6月23日の日経新聞の「真相深層」は読み応えがありました。「AIが起こす棋譜革命」というタイトルで、記者は山川公生さん。

囲碁や将棋で人間がAIに破れてからの1年をわかりやすくまとめている記事でした。前半では囲碁界の現状が解説されており、最近の大会で起きたハプニングや韓国や中国の囲碁棋士がAIとどのように付き合っているのかを知ることが出来ました。

後半は将棋界の現在について。積極的にAIを活用する若手の棋士の活躍が目立つとありました。藤井七段の戦い方を例にあげ、「プロ棋士の間では新しいセオリーの模索が始まっている」とありました。これまでの常識とどう付き合うかという課題も出ているようです。

もう少し詳しくご紹介したかったのですが、有料記事ですのでご勘弁のほど。(日経のHPで読めますので検索してみて下さい)

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PS/本日(6/29)午前9時に台風7号が発生しました。暴風を伴って日曜日に本島に最接近しそうとのこと。将棋大会が行われるか心配ですね。

2018年6月14日 (木)

四段昇段の記セレクション

将棋世界7月号付録の「四段昇段の記セレクション」を読了しました。

三段リーグ戦を勝ち抜いて、プロ棋士が新しく誕生したときに「四段昇段の記」が掲載されます。年2回楽しみにしている記事です。1992年から始まり、今回の付録にはこれまで登場した棋士26人分が再録されています。

全体的にはプロ棋士になれたという感極まる喜びよりも、対岸の見えない暗黒の海を泳ぎ切ってやっと無事に辿り着いたという虚脱感を感じさせるものが多いように思いました。三段リーグをもうやらなくていいという安堵感なのでしょうか。その中には少しのミスくらいで楽に泳ぎ切った強者もいましたが。

自身の将来が決定した時の読み応えのあるものばかりですので、ぜひどうぞ。

さて、今年も8月中旬に奨励会の入会試験があります。県内からも数名が受験するようです。10代前半の子供達が自分の夢を実現するために、難関に挑む勇気とチャレンジ精神にエールを送ります。ぜひ頑張って下さい。

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2018年5月 5日 (土)

戦慄の▲7七金! 奇襲・きんとうん戦法/島本亮

悟空をよびよせ、なにやらむにゃむにゃ秘法を授けて「きんと雲は宙返り一回で十万八千里を飛べるぞ 」(西遊記/呉承恩)

待望の「戦慄の▲7七金! 奇襲・きんとうん戦法/島本亮(マイナビ)」を購入しました。かまいたち戦法やトマホーク戦法、かっこいいネーミングの戦法には心惹かれるものがあります。すべて指しこなせるようになりたいものです、笑。

2006年に刊行された「神戸発 珍戦法で行こう/島本亮(マイコミ)」できんとうん戦法を初めて知りました。この本では4ページの解説でしたが、これがまるまる一冊になって再登場です。

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上図がきんとうん戦法の基本形。西遊記の觔斗(きんと)とは「宙返り」の意でありますが、歩と7七の金を雲に、縦横に暴れる飛車を孫悟空に見立てれば、命名の由来がうかがえます。

実は島本先生にとって苦い思い出がありました。2012年3月号の将棋世界の「イメージと読みの将棋観」にこの戦法が紹介されました。「島本流▲7七金戦法は成立するか?」のテーマで並み居るトップ・プロの先生方に「リスクが高い」「指す気がしない」「捌ける気がしない」と、まあいろいろ酷評されたわけです。

しかし、プロが採用しないからダメだというとらえ方は違うように思います。一発芸として終わらせず、10年以上に渡り独創的な感覚で可能性を追求していたのです。持ち時間の短いアマチュアの将棋においては、知っているか知らないかでだいぶ景色が変わります。あまりまだ指されていないこの戦法は狙い目かもしれません。

あとがきに「私自身も自分を磨いて、この戦法を成長させることができればと思っています」とあります。島本先生を三蔵法師に見立てて、遙か彼方の天竺まで無事に辿り着けるかと想像すれば、これは痛快な物語になるはずです。

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今日(5/5)は島本先生の誕生日です。おめでとうございます! これからも応援しますので、頑張って下さい。

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マイナビにサイン本を予約したところ、手書きメッセージ入りの絵はがきまで同封されていました。そういう優しいお人柄の先生なのです。

2018年4月 8日 (日)

AIに心は宿るのか/松原仁

はこだて未来大学の教授で人工知能がご専門の松原仁先生の「AIに心は宿るのか(インターナショナル新書)」を読了しました。

本書で一番おもしろかったのは第三章の著者と羽生善治との対談です。「とどまることのない好奇心によって多くを知り、磨いた知性を盤上で発揮することで、羽生さんは、羽生善治たり得ているのだろうと私はいつも感銘を受けています」と評していますが、まさにその通りだと思います。

その両者の対談では学ぶべき事が多く、読み応えがありました。本書は、全体的に平易な言葉を用いて解説していますので、とても読みやすかった。おすすめの一冊です。

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2018年3月 8日 (木)

第2期豊田杯王位戦三番勝負記録集完成しました!

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宜野湾将棋道場では年間を通してリーグ戦を開催しています。一昨年からスタートしたリーグ戦ですが、第1期のトップリーグのAクラスには県内の強豪を招へいして行われ、初代王者に県アマトップのNさんが就位しました。
第1期A級順位戦に参加した選手全員の自戦記を収録した「将棋沖縄リーグ集」を昨年4月に製作しましたが、おかげさまで大好評でした。

第2期A級リーグ戦の優勝者のSさんがN王位へ挑む豊田杯王位戦三番勝負が昨年の10月末と12月初旬に道場で開催されました。県内初のアマチュアによるタイトル戦です。その白熱した模様を伝えるべく、今回も有志が集まり記録集を製作する運びとなりました。

再び編集長を仰せつかったのですが、前回の経験もあって割とスムーズに進行出来ました。こどもスクールの指導のために来沖していた島本亮五段がたまたま第1戦の会場にいらしており、ずうずうしくも観戦記をお願いしました。アマの将棋はプロの目にはどう映ったのでしょうか。本書でご確認下さいね。

第2戦は難解な将棋でしたが、挑戦者のSさんの自戦記と大盤進行を務めた純粋振り飛車党のOさんの観戦記を併録しております。Sさんの居飛車目線で読むも良し、Oさんの振り飛車目線で読むも良しというふうに構成されています。

編集に携わった者として、次世代を担う若手にぜひ読んで欲しいと思います。沖縄のトップに君臨する30代の強豪達を倒し、県将棋界に新たな風を吹き込んで下さい!

宜野湾道場では日曜日から発売します。今月行われる久留米王位戦沖縄県予選の会場でも予定しておりますので、ご購入していただければ幸いです。どうぞよろしくお願い致します。

2018年3月 3日 (土)

王将厳流島/村岡秀一&北山茂樹

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今週はきつかった。最初はくしゃみと鼻水程度の軽い風邪のようでしたが、治りかけに油断したせいでぶり返してしまい、今度は悪寒と高熱に3日間苦しみました。2度の検査でもインフルエンザではないということでしたが、いや~辛かった。季節の変わり目、皆様も体調にはくれぐれも気をつけてください。

前回は「賭け将棋一番勝負」をご紹介しましたが、なんとこの漫画には続編があったのです。「王将厳流島/村岡秀一&北山茂樹(桃園書房)」がそれでした。前作はコミック社から刊行されており、本作は出版社が異なりますが、前作の翌年に発行されていました。ストーリーも、真剣師の早坂史郎の放浪の旅が引き継がれていました。

過去に結婚の約束までしながら訳あって果たせなかった、元恋人が3人も登場してきます。いったい何人と付き合っていたのでしょうか。うらやましいほどのもて男なのです。
日本中の真剣師達を配下に収めて、闇の棋界を制覇する野望を抱く謎の金持ちが登場したりと、今後どのように展開していくかと益々期待したのですが、最終話の内容から判断すると本作品で完結したようです。

男も惚れる早坂のかっこ良いところをご紹介して、本日はお終にします。いつか決勝戦では、こういう風に勝ってみようと思っています、笑。

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2018年2月25日 (日)

賭け将棋一番勝負/村岡秀一&北山茂樹

近所の古本屋さんで「賭け将棋一番勝負(コミック社)」を見つけました。1977年に発行された昭和の漫画です。ぷりうすまだ中学生の頃である。

日本中を旅しながら、孤独に生きるさすらいの賭け将棋指し早坂が主人公です。どこか風貌はデューク東郷に似ているが、性格はそこまでクールでない。こちらは、旅の途中で知り合う困った人を助ける人情家であるのだ。

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ところで、いつから勝負の決着が着くときに、無言になってしまったのだろうか。この漫画では、以下のようなセリフが連発されるのである。

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ざっと拾ってみたが、勝敗に迫力が感じられるし、それがどんな詰まし方なのか知りたくなってきませんか、笑。

そういえば、ちょっとニュアンスが異なりますが、だいぶ前の将棋大会で小学生とおじいさんの対局でこんなハプニングがありました。おじいさんが王手されていることに気付かずに別の手を指してしまい負けたのだが、「なぜ王手!と言わなかった(教えなかった)のか」と小学生を困らせてしまった。すぐそばに審判さんがいたので、きちんと説明をして事なきを得たが、私が小学生のときには「王手!」と相手に知らせていたはずだ。これっていったいいつからそうなったのだろうかと気になり、調べてみた。

王手の発声[編集](ウィキぺディアより)

指導対局や縁台将棋、初心者同士の対局などでは、王手をかけた側が慣習的に口頭でも「王手」と言う場合がある。ただしあくまで慣習であり、「王手」と発声しなければならないという規定はない。

ということでした。それでも、3手一組、こちらの技が見事に決まれば「王手、飛車取り!」とか「8四銀、詰み!」とか言って駒をびしっと盤に打ちつけたいよね、笑。

本日(2/25)は沖縄市でレーティング選手権大会が開催されていますが、風邪が治らず、休みました。大会の様子が伝えられずに申し訳ございません。

2018年2月21日 (水)

人工知能の「最適解」と人間の選択

羽生善治共著の「人工知能の核心」に続きNHKスペシャル取材班が手がけた第二弾の『人工知能の「最適解」と人間の選択』(NHK出版)を読了しました。

本書のタイトルの「最適解」という言葉は、複数ある答えのうち、最も目的に見合ったものという意味で使用されており、人工知能は正しい目的とデータを与えれば、「最適解」を提示するということです。

本書では、人工知能はすでにゲームのレベルを超えて実用化されており、現実の世界でどのように使われて、どのような問題が生じているかを現地レポートやさまざまな関係者のインタビューを基に紹介されています。ぷりうすのブログですので、将棋に絞ってレビューします。

将棋に関しては、今回は天彦名人とポナンザが対戦した電王戦2番勝負を取り上げていました。また羽生さんがそれをどう見たかを紹介しつつ、人工知能の現状と未来を解説した内容になっています。

天彦名人は「対局中、自分の眠っていた能力が目覚めるのを感じ、とても楽しかった。将棋にはまだ自分の知らない宇宙が広がっていることを知った」と発言をしており、人間と人工知能が競争するという単純な図式ではなく、人工知能を使うことで人間はさらに可能性を広げられるのではないかと前向きに感想を語っています。

ソフトの手が神の手だと比喩的によく使われるようになり、将棋の世界でも棋士達が人工知能を教師のような存在として認めているようになっていますが、これは神がつくったものではありません。ソフトの出す答えは、あくまで「最適解」であり、「正解」ではありません。今後は人間の手を離れてソフトはどこまでも進化していくのでしょうから、人間がそれについていくことが出来るのか、かえって振り回されるだけにならないかと興味は尽きません。

棋士達にソフトがどのようなインパクトを与え、将棋界がどう変わっていくのかを含めて今後も目が離せません。

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2018年1月24日 (水)

銀が泣いている

阪田三吉を偲んで建てられた王将碑の横に「銀が泣いている」という名セリフで知られる盤面のオブジェがあります。
これは、大正2年(1913年)に東京で行われた、関根金治郎八段との香落ち戦の投了図を再現しています。盤面には”164手(4五歩)投了”と書かれており、天下が注目した一戦は三吉の勝ちとなりました。有名なセリフでおなじみのこの勝負は、てっきり三吉が負けたものだとばかり思っていたのですが、どうやら違っていました。

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「棋神 阪田三吉」の第二章「銀が泣いている」は、この世紀の一戦を観戦記風に構成されたものです。対局前夜から終局までを、本局に立ち会ったかのような臨場感あふれる様子で描かれています。三吉が指した7五銀を迎え撃たんとして、5四に上がった関根の銀を見て、愕然としたところを後年、次のように語っています。

Gin

「わてはほんまに阿呆や。わてはほんに今まで悪うございました。常づね自分に言い聞かせていながら、強情過ぎました。あんまり勝負に拘り過ぎあせり過ぎました。これからは決して強情はいたしません。無理はいたしません、と阪田が銀になって泣いているんだす...。」

このときの棋譜を激指14の七段先生で解析させたのですが、初手からこの局面を過ぎてしばらくの間は、まだ微妙に下手+であり、形勢判断はほぼ互角の状態を示します。
棋譜解析の折れ線グラフを見ても、三吉翁が形勢を損ねて苦しんでいるという心境がいまいち伝わりません。(*関根八段の香落ち戦です、念のため)
100年前に行われた将棋を現代のソフトで判定することが野暮なのかもしれませんが、この勝負は一度も関根八段が優勢になることもなく終局を迎えており、次のように締めくくられます。

「殺されようとした銀が、かえって敵陣で存分の働きをすることができ、形勢一転してとうとうこの晴れの勝負に勝てた」

「銀が泣いている」というよりも「銀を泣かせて勝つ」のほうが、この対局を正しく伝えるように思いますが、いかがでしょうか。いずれにしても阪田三吉への興味は益々尽きません。

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