書籍・雑誌

2017年7月21日 (金)

将棋・序盤完全ガイド(相振り飛車編)/上野裕和

Ueno

初めて将棋を本格的に学んだのは2013年から半年間続いたNHK講座での鈴木大介九段による「振り飛車のススメ」だった。ここからスタートしたので四間飛車党になったわけだが、そこで詳しく解説されたのは振り飛車対居飛車の対抗形だった。

しかし、現実の低級者同士による対局は相振り飛車がほとんどだった。双方が角道止めて飛車を振り美濃囲いを完成してからさあ始めましょうという、相四間飛車ばかり指していた。低級者同士が、一番難解な将棋を当たり前のようにやってたりする、泣。

相振り飛車が得意になるために、次に買ったのが「相振り飛車基本のキ/藤倉勇樹」でした。書かれていることは理解できるのだけど、たとえば取り上げている題材が、先手向かい飛車VS後手三間飛車が代表であるわけだが、なぜ先手の向かい飛車に後手は四間飛車で戦わないの?と気になっていたが、そういうもんだろうなあと読んでいた。

今回紹介する「将棋・序盤完全ガイド(相振り飛車編)/上野裕和(マイナビ)」を読んで、長年ずっと喉に小骨が刺さっていたような違和感が、すっと取れてラクになりました。

この本は相振りの戦い方を学ぶ前に知っておくべき、その戦形の歴史と先人達によって蓄積された技術を伝える歴史の本なのです。昭和の時代から相振り飛車と言えば、先手向かい飛車対後手三間飛車が主流だったのもこの本で初めて知ったわけですが、その理由も詳しく解説されています。こういうスタイルの将棋の本ってこれまであったでしょうか!

子供の頃に将棋を始めれば、ちょっとした疑問は実戦を通していつのまにか消化しクリアされるようですが、大人から始めた将棋では、ちょっとした疑問に対しても理屈で解決したい。それが叶った完成度の高い本です。

戦法の技術の進化を図と表と章ごとのまとめで分かりやすく工夫して丁寧に書かれていますので、級位者で相振り飛車のなんたるかが知りたい方にはおすすめの一冊です。

振り飛車党ゆえにこれまで避けて通れなかった相振り飛車という戦いもこれからは方針を立てやすくなったように思います。

最後にマイナビさんへお願いをひとつ。この本を含め最近出た「対振り銀冠穴熊」と「横歩取りで勝つ攻めの最強手筋ガイド」も買ったのですが、これら本では、帯とカバーが一体化されていたり、本の見返しの紙(あそび)が省略されています。コスト削減の一環でしょうが、将棋の本には棋士から揮毫を頂くのも楽しみのひとつですので、表紙の次にあるべきあそび紙はちゃんと挟んで販売して下さい。
今回、サイン本を購入したのですが、上野先生の揮毫が本の最後のページの余白に書かれていて、ちょっと違うよなあという感じです。

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サインは裏でなくて表表紙の見返しに欲しいよね。

上野先生による自著のご紹介はこちら

2017年6月14日 (水)

プロ棋士という仕事/青野照市

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青野照一九段の「将棋界の不思議な仕組み プロ棋士という仕事(創元社)」を読了しました。

将棋界にまつわる様々な質問に対して見開き2Pで1つずつ解答していくという読み切りスタイルなので、どのページから読んでも楽しめます。50年近く将棋界に在籍している青野先生が、将棋ファンが知りたいことや将棋界の仕組みや内情を分かりやすく丁寧に解説しています。将棋ブームの現在、うんちくを語る上ではお薦めの本です。

今回、入手したのは青野先生の揮毫入りでした。とてもうれしい。「どこまで行くかは才能の差 いつまで持つかは修行の差」とありました。まさにプロ棋士という仕事がどういうものなのかを的確に伝える言葉ですね。

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2017年6月11日 (日)

人工知能はどのようにして 「名人」を超えたのか?/山本一成

最強将棋ソフトponanzaの開発者の山本氏が書いた『人工知能はどのようにして 「名人」を超えたのか?(ダイヤモンド社)』を読了しました。将棋ソフトや開発者に関する本はいくつか読んでいますが、待ちに待った真打ちの登場です。

副題に「最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本質」とあるように、これら3つの学習を通して、ponanzaがどのようにして強くなっていったのかを分かりやすく解説しています。ただ、流行のディープラーニングを紹介するに当たり、将棋ではなく囲碁を題材として解説しているので、将棋との関係の点では分かりにくくなってしまったように思う。
ディープラーニングの仕組みについては、得られた情報を画像と結びつけてよく説明されるので、それなら囲碁を例に取れば読者に伝えやすいということで選んだと思うが、盤上と盤外に駒が出入りする将棋というゲームで、どのようにディープラーニングを使って将棋ソフトを鍛えていくのかというところを知りたかった。

最終章で、ここ半年に起きた画期的な出来事として、pononzaにもディープラーニングを組み込むことができたと山本氏が報告しています。それがなぜ出来たかと言うことについては数行でさらっと説明されていますが、その詳細についてはまた次回ということでしょう。

それともうひとつ。将棋ソフトに大きなブレイクスルーを起こしたBonanzaについては触れてほしかった。コンピューター将棋の歴史を語る上では絶対にはずせないと思う。

人工知能の最前線で活躍されている著者の興奮が伝わってくるスリリングな本でした。

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2017年4月14日 (金)

将棋沖縄リーグ記録集完成しました!

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平成28年に宜野湾将棋道場が主催して行われた第1期豊田杯将棋沖縄リーグの記録集がついに完成しました。
平成26年4月に照屋席主が宜野湾市に将棋道場を開いて今年で3周年を迎えましたが、その記念誌という位置づけになっております。

1年間を通して行われた本リーグ戦には総勢70人余の道場会員が参加し、大盛況のうちに閉幕しました(現在は第2期リーグ戦の真っ最中です)。
特に沖縄の若手や強豪達を集めたトップリーグのA級では見応えのある対局が繰り広げられました。その熱戦譜を盤上に並べることが会員の棋力向上につながるという考えと道場の歩みを残したいという思いから本誌を製作することになりました。

棋譜掲載だけでは味気ないので、A級選手の皆様に記憶に残る一局を選んで頂き、その自戦記を執筆して頂きました(級位者にも分かりやすいように技術解説しています)。また道場に通う子供達のインタビューも掲載しており、ここから未来のプロ棋士が誕生することを期待しています。

編集長を仰せつかっておよそ4ヶ月の作業はスムーズに進む時もあれば、トラブルが生じて大変な時期もありました。届いたばかりの本を手に取ってみるとこれまでの苦労が全て報われて、とても良い思い出になっています、笑。本誌の製作にあたりお世話になった皆様、ほんとうにありがとうございました!

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豊田杯A1リーグ表彰式に出席しました」も併せてお読み下さい。

2017年4月12日 (水)

人工知能の核心/羽生善治

一年前にNHKで放映された「天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る」という番組がありました。あれはとてもおもしろかった。本書(人工知能の核心/羽生善治・NHK出版)はその番組の取材を通して羽生先生が学んだことや考えていることをまとめたものです。

人工知能というテクノロジーについて幅広く取り上げて分かりやすく丁寧に解説しており、さらに、これから起こりうる問題や今後の課題も提示するという、かなり密度の濃い内容になっています。
さて、この大作をどのようにまとめようかと付箋を貼りながら再読していましたが、アマゾンに本書を簡潔に要約した秀逸な投稿レビューを見つけました。どうぞ、そちらをご覧下さい、笑。

人工知能と将棋の関係では、「大量の情報を得ることに追われて、かえって自分の頭で課題を解決する時間がなくなっている」と羽生先生が懸念している箇所もありました。

最終章では「人工知能について知ることは、人間について深く知ることであるのかもしれません」と感想を述べており、将棋の強さだけを求めるのではなく、あらゆる知の領域に興味を持ってそれを追求する羽生善治という存在は、ほんとうに将棋界の宝だなあと思いました。

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2017年4月 6日 (木)

ひらけ駒!/南Q太

ひらけ駒!全8巻を読了しました。小学4年生の男子とその母親との将棋を通して展開される親子関係を描いた漫画です。これまでいくつも将棋漫画を読みましたが、本作品が一番気に入っています。
それは、漫画の主人公が将棋がとても強い宝クンではなくて、彼を励ましながら見守っているお母さんに設定されているからです。そのお母さんが、まるで今までのおれとそっくりな行動をしていたところに共感できるのです、笑。

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作者さんも息子さんが将棋を始めたことを機会にこの漫画を描き始めたそうです。将棋あるあるのネタがいくつも登場しており、将棋初心者ならではの思わず相づちを打ってしまう場面が多くて、とても楽しめる内容になっています。

また他の登場人物もきちんと個性豊かに描かれており、その振る舞いまでも注意深く観察しているからこそ描けたんだなあと感嘆するシーンがいくつも出てきます。漫画の中で起きた出来事というよりも、実際にこれまで目にしたことのあるいくつもの光景と重なります。こどもの将棋の世界ではよくある出来事をとても丁寧に扱っているからこそ、素晴らしい内容の作品になっていると思います。

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将棋を始めたお子さんに付き添う親御さんにはお勧めの漫画です。機会あればぜひお読み下さい。

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ただ残念なのは、第8巻までコミックが刊行されて以降、雑誌での連載が休止になっていることです。すでに8年も経っています。ネットからは休載に至った噂がいくつか拾えます。「また9巻でお会いできたらうれしいです」と作者あとがきがありますので、これを信じて、いつの日にか再開されることを願っています。ほんとうに素敵な将棋漫画なのです。

2017年3月17日 (金)

指に染み込ませたい極上手筋/畠山 鎮

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NHK将棋講座の付録「指に染み込ませたい極上手筋」の6冊分を製本しました。持ち歩いているうちに1冊が迷子になってしまった。やっとそれを見つけたので、だいぶ値は張るが、プロにお任せして製本させることにした。この付録にはそうするだけの価値があるものだと思っていたし、いつか畠山先生にお会いして揮毫と落款を頂いたら、世界にひとつだけの宝物になるよね、笑。

これらは2016年7月~12月まで半年にわたって連載された手筋についての技術書ですが、畠山七段は第1回目に次のように書いています。

「プロの視点から"プロの感覚"とか"プロなら一目"などの"棋士の感覚"を伝えたいと考えています。何気ない序盤にもプロの悩み、意識が込められています。それを感じ取ってお楽しみいただけたらと思います。」

本シリーズでは序盤・中盤・終盤における例題の局面図において、どう考えれば厳しい手を指すことができるのかを解説しています。さらにこのときプロは何を恐れ、何を理想とするのかという棋士の思想を伝えているところが、これまでの技術書とはひと味もふた味も異なる内容になっています。
寝転がって読まずに、盤と駒を用意して「指に染みこませ」ながら、一字一句、大切に読みたい本なのです。

(滅多にないが)24で快勝したときに、息子にその棋譜を自慢するが、「まだ甘い。厳しさが足りない」とたいてい指摘されてしまう。確かに、緩手を数発放ってしまったせいで、一手差で負けてしまうことが多い。その紙一重の闘いを制しなくては勝ち続けることは難しい。

自分の技術や構想をもっと磨いていくために、この本はしっかりと読み込んでいこう。これからも精進あるのみ、もっと頑張る。

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2017年2月20日 (月)

王将たちの謝肉祭/内田康夫

以前kondohさんからおすすめ頂いた本を読了しました。

浅見光彦シリーズで有名な内田康夫先生が1986年に書き下ろした将棋ミステリーの「王将たちの謝肉祭」です。いちおう犯人捜しの推理小説です。
登場人物のほとんどにモデルの棋士がおり、性格や気質もたぶんその通りなんだろうとニヤニヤしながら読めた、笑。また将棋界の内情(名人戦の取り扱いとか段位の認定とか)を描いているところもおもしろかった。

最初に登場した女流棋士が主人公かと思いきや、途中から天才のアマ棋士が出てきて、彼女と関わりながら、プロ棋士をどんどん負かしていく。この辺からだんだんミステリーというよりは将棋小説にシフトしていく。このままエンディングに進むと思いきや、いよいよ真打の升田幸三をモデルにした主人公が活躍して大円団を迎える。新旧交代のクライマックスのシーンでは感動して泣けた。いつの間にかおれも、升田ファンになってしまっていたのだ。

この本は推理小説のスタイルを借りた、作者による升田先生へのラブレター小説だったのである。(最後に犯人は捕まるが、もうどうでもよくなった)

こんなおもしろい本を紹介して頂き、ありがとうございました。
すでに絶版のようですが、amazonの中古では、安く買えます。

PS/唯一、実名で登場する、これからの将棋界を担う新人棋士が最後にちょっとだけ出てくるが、これは作者の先見の明を証明したものでした、すごい!

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2017年1月28日 (土)

「永遠の一手」を改めて読みました。

週間チャンピオン誌で連載されていた「永遠の一手~2030年、コンピューター将棋に挑む~」(秋田書店)が上下2巻のコミックになりましたので、再読しました。

このマンガが雑誌で連載されている頃は、名人とコンピューターが戦ったらどちらが強いのか、羽生さんならまだ勝てるのではないかという期待感もあったと思う。しかし、ジャンルは違えど、まだまだ解明されていないことが多いと言われていた、最後の砦として残っていた囲碁においてAlphaGoがイ・セドルを破ったことで人工知能の進化の早さを目の当たりにしては、勝負の点ではもう興味がなくなっている。

さらに、第三者委員会の報告書で知ったことだが、「棋士の多くは将棋ソフトを使用して、公式戦の準備や対局終了後の分析等に用いている」とあるように、プロ棋士が日頃の研究においてソフトを当たり前のように使用している現状では、コンピューター将棋とプロ棋士の対戦の意義もなくなっている。(研究にソフトを使っているのは、少数派だと思っていたのだ)。

「永遠の一手」は、将棋界がこれからも発展するようにと願いを込めて、人間賛歌的なエンディングで終わりましたが、実際の将棋界はこれからどのようにコンピューター将棋と付き合っていくのでしょうか。
今春、天彦名人とポナンザの電王戦が決定しているが、勝っても負けてもポナンザに名誉九段を認定して、この棋戦を終了してもいいのではないかと思うのだが、いかがでしょうか。

原作者の伊藤さんは後書きで「人間が機械に頭を下げたとき、コンピューター将棋も大きな転換期を迎えたと思います」とこれまで気にも留めなかったことを指摘しています。研究者の視点から、他にも示唆に富む意見が多くありますので、後書きもご一読下さい。


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2017年1月22日 (日)

山田眞山/沖縄絵物語

今日は将棋のお話ではありません。
探していた本を海外の古書店で見つけて購入しました。郷土の芸術家の山田眞山の1952年に出版された画集です。高かったけど、直筆サイン入りだったのでうれしい。

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そこに描かれているのは、琉球の歴史や風景、風俗です。これらはアメリカ占領軍の新聞のための挿絵として氏の記憶をたどりつつ描かれたものでした。ここには琉球のかつての姿があります。

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地元では平和記念像の制作者として有名です。二度と戦争を繰り返してならないと平和への悲願をこめてこれが製作されました。沖縄にいらしたときにはお立ち寄り下さい。

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