たまには温泉19

最後は、有馬天神社の境内にある天神泉源へ。煙突からもくもくと湯煙が立ち上り、お湯の沸く音にも迫力があった。有馬の温泉は、火山由来の地表近くの地下水が温められたものではなく、地球内部のマントル由来の熱水なのだ。

その天神泉源から一番近いのは、老舗旅館の上大坊(かみおおぼう)さん。源泉から最短距離でお湯を引いている。参考にしたのは"温泉博士"の異名を持つ小林さんのブログ。「有馬温泉では珍しい本物の源泉かけ流し」と紹介されているからには、泊まらねば。
建物は年季が入ってレトロな雰囲気。脱衣所から急な階段を降りてお風呂場へ。内部は蒸気で曇って周りが良く見えない。鉄分で泥のように赤茶けたお湯に期待が高まる。

しかし、あまりにも熱すぎて浴槽に入れない。やっと足先だけ浸すが、塩分濃度も高く皮膚がピリピリする。結局、風呂おけに湯を汲んで水道水で薄めて、かけ湯することしかできなかった。おれ、何しにここへ来たのだろうか、泣。
いつもの担担麺にすればいいものを、似たようなものだろうと麻辣麺(マーラーメン)を注文して、あまりの辛さに一口も食べられなかったことを思い出した。こちらの湯は、ラーメンでたとえれば激辛党向け、まさに通の温泉マニア向けだった。おれのような初級者が来るところではなかったと、後悔して寝た。
翌朝は肌寒かった。地中を通るパイプも冷えているだろう。朝もまだ早いので湯の温度も下がっているはずだと、再チャレンジ。ああ、諦めないで良かった、お湯に肩まで浸かることができたのだ! 「浸かると源泉が重く感じます」「これが本来の有馬温泉の湯だと感心します」と温泉博士。まさにそのとおりの感動の体験だった。
上大坊の湯を制して、温泉愛好家として一つ昇級できたと思う。有馬はまだまだ奥が深そうだ。また調査に来たい。